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野鳥と私たちの暮らし 第7回 人と密着して栄える スズメ

人とスズメの戦いの歴史

 里に開けた環境がつくりだされて以来、人とスズメとは仲良く共存してきたのではありません。水田の米を食べるスズメは、稲作を開始した当初から害鳥でした。稲作の歴史は、スズメとの戦いの歴史とも言えるでしょう。案山子(かかし)は、古くからのスズメを追い払う対策の一つでした。その他にも様々な対策がとられてきたことは、今日各地に残る田畑を鳥の被害から守ることを祈念し、子どもたちが手に手に鳥追い棒や杓子(しゃくし)を持って打ち鳴らす「鳥追い」行事、その時に歌われる鳥追い歌、さらには鳥追い小屋に関する古い文献からもうかがい知ることができます。

 その戦いは、今日までなお続いています。案山子に代わって登場した「目玉風船」、最近の「防鳥ネット」、「爆音」など、時代と共に様々な対策がとられてきました。でも、この戦いに終わりはありません。案山子にとまって遊ぶスズメが端的に示すように、最初は警戒しても安全であることを鳥はすぐに学習してしまうからです。スズメには生活が懸かっていますので、単なる脅しでは効果が持続しません。これからも、あの手この手の戦いは続くことでしょう。

人に気を許さないスズメ

 スズメは人に依存し人の周りで生活する身近な鳥ですが、人には決して気を許さない点もこの鳥の特徴です。人が近づくとさっと逃げ、人を近づけようとしません。スズメの人に対するこの警戒心は、稲作が始まって以来の人との長い戦いから身についた習性と私は考えています。

 私が子供の頃には、空気銃でスズメなどの野鳥を捕って食べていました。また、スズメを罠で沢山捕らえ、焼き鳥として普通に食べられていました。それが、現在では野鳥保護の観点からスズメが捕獲されることはほとんどなくなり、スズメの焼き鳥は今ではほとんど食べる機会がなくなりました。

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