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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第7回 人と密着して栄える スズメ

変わる人とスズメの関係

 現在では人がスズメを捕らえることはほとんどなくなったのですが、最近スズメの数が減ってきていると言われています。その原因は、家屋が近代化しスズメが巣を造る場所が減ってしまったこと、都市部や町中では空き地がなくなり、スズメの餌となる草の種子や雛を育てる昆虫が得にくくなったことがあげられています。

 もう一つ、スズメに大きな変化が最近起きています。東京や大阪などの大都市で、人の手から米やパンくずをもらう「手乗りスズメ」の出現です。公園などで、スズメに餌を与える人が最近増えたからです。

 パリやロンドンなど外国の都市には、スズメとは別種のイエスズメが生息しています。イエスズメが人から餌をもらうことは、外国では以前から普通のことでした。牧畜文化を基本にする外国では、人とイエスズメとが対立する関係になかったからなのでしょう。

 それに対し、稲作文化を基本にする日本では、人とスズメとは長い間対立関係にあり人に気を許さなかった日本のスズメにとっては、これは大きな変化です。この変化が続けば、以前のように人に気を許さない田舎のスズメと人を恐れない都会のスズメといった習性の違いが見られるようになるかもしれません。

なかむら ひろし 1947年長野生まれ。京都大学大学院博士課程修了。理学博士。信州大学教育学部助手、助教授を経て1992年より教授。専門は鳥類生態学。主な研究はカッコウの生態と進化に関する研究、ライチョウの生態に関する研究など。日本鳥学会元会長。2012年に信州大学を退職。名誉教授。現在は一般財団法人「中村浩志国際鳥類研究所」代表理事。著書に『ライチョウを絶滅から守る!』など。

(モルゲンWEB)

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