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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第13回 家屋に移り住んだ益鳥 ツバメ

 イワツバメは、名前の通りかつては山地から高山の岩場に営巣していたのですが、明治以降平地にビルなどの高い建物ができてからは、山から平地にも進出し、現在ではビル、橋などの人工構造物に集団で巣を造り繁殖しています。イワツバメの平地への侵入により、もともといたツバメの数は一時減少したとのことですが、現在では多くの地域で両種が共に繁殖し、共存しています。

 ツバメとイワツバメは、どちらも泥と枯草を唾液で固めた泥の塊を積み上げて巣を造りますが、両者の巣の形は異なっています。ツバメは壁面におわん型に巣を造りますが(写真上:巣の中で親の給餌を待つ巣立ち直前のツバメの雛)、イワツバメは横に巣穴の出入り口がある巣を造ります(写真下)。より標高の高い地域で繁殖するイワツバメは、ツバメのようにオープン巣よりも、この巣口が小さい巣の方が保温効果があるからなのでしょう。

完成した巣にとまるイワツバメのつがい

稲作と共に栄える

 ツバメは、日本では稲作の発展と共に栄えてきた鳥と考えられます。弥生時代以降、水田耕作のために平地の林は伐採され、湿地が開墾され、今日の里の開けた環境がつくりだされました。人々は集落を作って定住する生活になりました。初期の頃は草ぶきの家屋であったのですが、そのうちに木造の家屋が造られるようになりました。その木造の家屋に巣を造り、繁殖するようになったのがツバメです。

 ツバメは、稲作の害虫を食べる益鳥として日本では古くから大切に扱われてきました。稲作の発展により、ツバメに繁殖場所を提供しただけでなく、水田という餌となる虫が多量に得られる環境をもツバメに提供することになりました。

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