• 十代の地図帳
  • 青春の記憶に生きるヒントを訊くインタビュー記事

春風亭 一之輔さん(落語家)

卒業の時期がきます

 芸術系大学が特殊なのか、それとも僕のまわりだけなのか、何かは分かりませんが、就職活動をしている人はほとんど見かけませんでした。当然、僕自身もそういうことは一切考えず、バイトとかでどうにかは生きていけるだろう……、なんて思っていた(笑い)。

 でも実際、テレビの制作現場とかカメラマンだとか、みんなバイトから入ってそのまま—―というのが多かったんですよ。僕もテレビ局のADをやったりしましたが、僕の場合それになりたいとかは全然なくて。

落語家にはいつごろ

 卒業すると、ようやく自分は何をしたいのか真剣に考え始めた。で、深く考えを進めるうち、(自分に出来ること、やりたいことといったら……、落語か。そうだな落語で生きていけるならいいな。ああ、落語家になりたいな――)となった。

目指す落語家像は

「どういう人になりたい」とか「こういう落語をしたい」というよりは、とにかく「寄席に出たい」と思っていましたね。ふらっと何気なく歩みこんで、みんなでゲラゲラ笑って……、そういう空間ってあんまりないじゃないですか。そのどこか緩い寄席の感じが好きでね。結局僕は、朝から寄席でボンヤリぶらぶら見ているのが一番好きなんですよ。寄席に四六時中いて、15分だけ喋ってパッと帰っちゃう、そんなのがいいなと純粋に思った。

ご両親の反応は

 両親とはあまり喋らなかった(笑い)。東京に出ちゃっていましたしね。こっちから、「落語家になる」ってもう一方的に。だから事後承諾に近いですね。

続きを読む
4 / 5

関連記事一覧