野鳥と私たちの暮らし 第32回 浮巣を造る鳥 カイツブリ
古名はにほどり
古くから日本人に親しまれてきた鳥で、奈良時代以降「にほどり」と呼ばれてきました、カイツブリは漢字では、入る鳥(鳰)と書きます。水に潜って生活するこの鳥の習性からなのでしょう。鳰と書いて「にお」とも読みます。琵琶湖には古くからカイツブリが多かったので、琵琶湖の古い名は「鳰の海」でした。現在では滋賀県の県鳥となっています。
カイツブリは、冬の季語にもなっています。万葉集をはじめ古くから詩歌に詠まれ、俳句にも詠まれてきた鳥です。
春先に岸辺に沿ってなわばりを形成
長野市街地の北のはずれにある田子池でカイツブリを調査した信州大学教育学部生態研究室の学生であった小池寿子さんの研究によると、この鳥は池の氷が溶ける2月下旬から3月上旬にこの池にやってきます。最初の頃は池の中央部に群れているのですが、その後水面を羽ばたきながらキュルキュル…という鋭い鳴き声を立てながら滑走する求愛行動が始まり、3月下旬には群れの中からつがいが次々にできてきます。
つがいは、ヤナギやヨシのある岸部になわばりを持ち、隣りのつがいや池の中央部からやって来る他のカイツブリに対し、甲高い声をあげ、侵入者めがけて水しぶきを上げて滑走し、容赦なく追い払い、なわばりを防衛します。