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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの生活 第6回 里山の豊かさの指標 サシバ

里山の水田環境で栄える

 長野県の里山では、雪解けが始まる4月頃から冬眠から覚めたヤマアカガエル、シュレーゲルアオガエル、トウキョウダルマガエル等のカエル類が水辺に集まって産卵を始めます。水田に水が張られ、代掻きが行われる5月初め頃には、昼も夜もこれらのカエルの合唱がうるさいほどに聞かれる時期を迎えます。この頃にサシバが捕えていた餌の多くは、水田のカエル類でした。

 稲作が本格的に始まった弥生時代以後、日本の水田環境に適応した動物の代表がこれらのカエル類、さらにはフナ、ナマズ、ドジョウなどの魚類、ゲンジボタルなどのホタル類などです。これらの森の環境から抜け出し、開けた環境に適応した様々な小型の動物を餌とし、里山環境の生態系の頂点に立ち、今日まで栄えてきた猛禽がサシバなのです。ですので、サシバは、日本の里山環境の豊さの指標といえる鳥なのです。

 子育てが終わった7月になると、巣立った雛と共にサシバは里山の水田環境から姿が見られなくなります。おそらく、8月の夏にはより標高の高い山地に移動し、昆虫を主な餌とした生活をしているのではないかと考えています。

集団で渡る

 8月末から9月の初めには、南への移動が始まります。サシバの秋の渡りは、時には大集団となって移動する点が特徴です。長野県内で特に顕著な渡りの集団が見られる場所が乗鞍岳の近くにある白樺峠です。東北や北陸で繁殖したサシバが北アルプス沿いに南下し、集合する場所で、同じく南に渡るハチクマ等の猛禽とともにそこからさらに南西方向に移動してゆきます。

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