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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第9回 『人の生活に密着し、したたかに生きる鷹 トビ』

集団で塒(ねぐら)をとる

 トビは、日中には河原など餌が多い場所に集まるほか、夜にも集まって集団で塒をとる習性があります。特に餌が得にくい冬には、ほとんどの個体が集団で塒をとります。そのため、トビの塒を発見しそこに集まってくる羽数を調べることで、ある地域に生息する数を正確に明らかにすることが可能です。1979年の年末から1980年の冬に、信州大学教育学部の生態研究室で鳥の研究をした卒業生が中心となり、長野県全体を対象にトビの塒の分布とそれぞれの塒に集まる羽数を調査したことがあります。私がまだ30歳代の初めの頃です。

 その結果、長野県内には計19のトビの集団塒があることが分かりました。塒のほとんどは、盆地に接した山地のアカマツ林にあり、最も大きな塒では689羽が集まっていました。各塒に集まった数を合計すると当時長野県全体には3,152羽のトビが生息することが分かりました。最も多かったのが松本盆地で、県内に生息する約半数をしめ、以下伊那、佐久、長野、諏訪、上田盆地の順でした。

カラスと競合し、いがみ合う

 カラスとトビは、共に人の生活と密接な里と里山といったよく似た環境に棲み、そこでよく似たものを食べて生活しています。そのため、両者は住む場所や餌をめぐってたえず争っています(写真2)。体の小さいカラスの方は、体の大きいトビに対して群れで対抗し、飛ぶことが苦手なトビの方が負けることもしばしばです。

写真2・鉄柱の上でハシブトガラスと対峙
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