野鳥と私たちの暮らし 第19回 漁業被害をもたらす黒い軍団 カワウ
鵜飼いの鵜は近縁のウミウ
現在は嫌われることが多いカワウですが、人の生活に役立てられてきた歴史もあります。鵜を使ってアユなどの川魚を捕る伝統的な漁法「鵜飼い」です。鵜飼いの歴史は古く、『日本書記』にも登場し、『古事記』にも詠まれ、群馬県の古墳からは鵜飼いの様子を表現した「鵜形埴輪」が出土しています。平安時代から貴族や武士は、鵜飼いを楽しんできました。織田信長は鵜飼いを見物し、鵜飼いに鵜匠の名を授け、鷹匠と同様に遇しました。その伝統は、今も受け継がれ、岐阜市の長良川鵜飼などで観光として残されています。
しかし、日本で鵜飼いに使われてきたのは、より体の大きいウミウの方が一般的で、カワウではありませんでした。カワウとウミウの糞は共に、愛知県では古くは肥料として使われた歴史もあります。
一時は絶滅に近い状態に
人の生活に利用され、また嫌われる存在のカワウも、数が減少し、絶滅が心配された時期もありました。1920年以前は、日本各地に生息していましたが、その後急速に数を減らし、1970年代初めカワウの集団繁殖地は愛知県の「鵜の山」、東京の「不忍池」、大分県の「沖黒島」の3ヶ所となり、3,000羽以下に減少しました。減少した原因は、人による捕獲の他、農薬の使用、水質の悪化による餌となる魚の減少とされています。
その後の回復と漁業被害
いったん減少したカワウも、その後は増加に転じました。1980年代初めには2万~2万5千羽に増え、さらに1990年代には飛躍的に増加し、現在では20万羽以上に回復しました。数の増加と共に、いったんいなくなった地域に分布を広げ、近畿から関東、東北へと広がり、最近では北海道でも繁殖が見られるようになったのです。