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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

清々しき人々 第29回 アメリカの放送産業を開拓した デイヴィッド・サーノフ(1891−1971)

RCAの総支配人に就任

 サーノフの奮闘の効果は絶大で、無線通信は物珍しい科学技術ではなく、航海の安全にとって重要な手段だという理解が浸透し、一定規模以上の船舶には無線装置と救難信号SOSを発信する装置の設置、そして専門の無線技士が乗船することが法律によって義務とされるようになりました。このような無線の役割が注目されるようになって、多数の人々に一斉に情報を伝達するラジオ放送のアイデアが登場してきました。

 そのような背景から一九一九年に、ジェネラル・エレクトリック(GE)が中心となってウェスティングハウス(WH)、アメリカ電信電話会社(AT&T)というアメリカを代表する電気機器や通信関連の企業が出資してラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ(RCA)が設立されました。この会社にはアメリカ・マルコーニ無線電信会社も参加したため、そこに所属していたサーノフはRCAの総支配人に任命されます。

 ここでもサーノフは将来を見通す才能を発揮しました。当時の無線通信は特定の地点から特定の地点へ情報を伝達する通信手段と理解されていましたが、これを特定の地点から多数の人々へ一斉に情報を伝達する放送手段に拡大したのです。当時は電波の利用に厳格な規制がなかった時代で、サーノフは次々と各地の電波の周波数帯を確保し、一九二六年までに全米を一体とする放送ネットワークを構築してしまいました。

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