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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの生活 第6回 里山の豊かさの指標 サシバ

多様な小動物を餌に

 調査してまず分かったことは、サシバのつがいが行動している範囲は、意外と狭いことでした。つがいの雌雄が生活している主な範囲は直径600mほどで、遠出をした時を含めても1㎞の範囲内にほぼ収まっていました。

 新緑の5月になると、農耕地に接した林のスギやカラマツ、アカマツ等に巣造りを開始し、3個から5個の卵を産み、温めます。巣の大きさは、ハシボソガラスの巣とほぼ同じで、比較的小さなものでした。卵を温めるのは雌で、雄は1時間に1回ほど巣にいる雌に餌を運び、与えていました。

 サシバの巣のいくつかに小型ビデオカメラを設置し、卵を抱く様子や孵化した雛の子育ての様子を録画しました。それにより、巣にいる雛に運ばれてきた餌の内容は、実に多様であることが分かりました。最も多かったのは、両生類のアマガエルなどのカエル類、次にトカゲ類やヘビ類といった爬虫類、さらにクワガタ類やバッタ類、セミ類といった昆虫類が多く、ハタネズミなどの小型哺乳類、時にはスズメの雛といった鳥類も少数ですが運ばれてきました。巣に運ばれてきたヘビ類には、マムシも含まれていました。嚙まれずにどう捕えているのだろうか?

 サシバの餌の捕り方は、開けた環境に接した林の縁にある高い木の梢や枯れ木にとまり、地上で動く獲物を見つけ、飛びついて捕えるという方法が一般的でした(写真2)。雛がまだ小さく白い産毛に覆われている時期には、雌が巣にとどまり、雄が巣に運んできた餌をちぎって与えていましたが、雛が成長し黒い羽毛で覆われる頃になると、雌雄交代で餌を巣に運んできて、そのまま雛に与えて飛び去りました。

 サシバの雛数は他の猛禽に比べ多いので、雛が成長した段階では親の運んできた餌の取り合いと奪い合いが狭い巣の上で激しく展開されました。ヘビの場合には、雛同志が両端を引っ張り、奪い合うこともよく見られました。

写真2 水田でカエルを捕えたサシバ
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