小野善郎

『思春期を生きる——高校生、迷っていい、悩んでいい、不安でいい』

思春期は回避不能

 思春期に抱える、迷いや悩みには、基本的に答えはありません。だからこそ、答えを見つけようとすればするほど、どんどん深みにはまってゆく……。でも、その悩みこそ思春期の本質なのだから、絶対に避けては通れない。なので、「悩みを抱きかかえながら、いかに思春期を通り抜けるか」というのが唯一の突破手段です。今回の本を通して、一番子どもたちに伝えたかったのもそれなんですよ。

思春期のトラブル事情

 生真面目に向き合いすぎる、思春期を先送りにする、二つの問題パターンがあります。前者は、思春期に答えを求めてしまうケース。その結果、虚無感、無力感に苛まれ、絶望し、死すら願うようになる。そうじゃなくて、答えは出ないけど、色々試行錯誤してみて、悩み、苦しむのが、思春期の一番の仕事なんだよ、と。

 いつもそう訴えるんですが、どうしても、学校の教育現場、家庭では、受験や内申書が優先される。「悩みは重々分かるけど、今は目の前の目標に集中しよう。その迷いは、大学に入ってから、思う存分考えればいい」こういうわけです。しかし、先送りの代償は大きく、やがて巨大な不安となって心に重くのしかかります。その結果、せっかく苦労して良い大学に入っても、そこで自分を見失ってしまったり……。やはり、悩むべきときにきっちり悩みぬいておくのが、一番の方法だと思います。

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