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  • 過去に読書と教育の新聞「モルゲン」に掲載された記事からランダムでpickupし紹介。

野鳥と私たちの暮らし 第13回 家屋に移り住んだ益鳥 ツバメ

 以前には、農家の土間といった屋内での営巣も多く見られ、土間の入り口の戸には、ツバメが出入りできる穴が用意されていました。それが、最近ではアルミサッシの普及で、ツバメの屋内での繁殖はほとんど見られなくなっています。また、牛や馬が飼育されていたころには、開放的な構造のこれらの飼育舎がツバメの営巣場所として好まれていました。

 さらに、最近の顕著な変化は、コンビニエンスストアなどにツバメが営巣することが目立って多くなったことです。夜を通して明るく、たえず人の出入りがあるので、カラスなどの天敵から安全で、かつ夜間も明るいので、餌となる虫が集まるからなのでしょう。古くから益鳥として大切にされたツバメは、人の生活に依存することで、これからも人の生活の変化に上手く適応し、したたかに生きてゆくことでしょう。

脚注:写真上(アイキャッチ)は、茨城県那珂市在住宮本奈央子氏撮影。

なかむら ひろし 1947年長野生まれ。京都大学大学院博士課程修了。理学博士。信州大学教育学部助手、助教授を経て1992年より教授。専門は鳥類生態学。主な研究はカッコウの生態と進化に関する研究、ライチョウの生態に関する研究など。日本鳥学会元会長。2012年に信州大学を退職。名誉教授。現在は一般財団法人「中村浩志国際鳥類研究所」代表理事。著書に『ライチョウを絶滅から守る!』など。

(モルゲンWEB)

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