「わたしのマンスリー日記」第7回「生活科魂」――三つの心

「生活科」との出会い

 平成元年に改訂された学習指導要領で「生活」(生活科)という教科が小学校低学年に設けられました。それまであった低学年社会科・理科を排して新設されることになったことに加えて、高等学校にあった「社会科」が「地理歴史科」と「公民科」に再編されることになったために、特に社会科関係者からは「社会科解体」として強い反対の声が挙がりました。
こともあろうに、社会科教育研究者として千葉大学から筑波大学に移ったばかりの私に文部省から、生活科の協力者になってほしいという依頼を受けたのはそんな最中でした。

 人生はドラマだとはよく言ったものです。正確な年は忘れましたが、某年4月の月曜日の朝9時半頃文部省の生活科担当教科調査官の中野重人先生から自宅に電話がありました。私はちょうど出かける前でしたので、とりあえずご用件は? と伺うと、今日行く場所と時刻と電話番号を教えてくれというのです。先生は慌ただしそうに「お願いしたいことがある」とおっしゃっていました。

 私のその日のスケジュールは、図書館などを回った後午後3時に東京渋谷の某小学校を訪問することになっていました。忘れもしない、ちょうど約束時刻の3時の2、3分前のことでした。正門に入った私の姿を見かけて職員室から大きな声がかかりました。

「文部省から電話が入っています。急いでください!」

 もちろん電話主は中野先生でしたが、普通の公立学校に文部省から直接電話が入ることはあり得ない話なので、電話を取り次いだ職員の方も何が起こったのかとうろたえた様子でした。

続きを読む
2 / 10

関連記事一覧